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ヒビノカップin千代田

中村政人の運営するコマンドNが主催の今回のヒビノカップ。
晴天に恵まれながら千代田区の旧錬成中学校にて行われた。

午前中は集まった参加者を5人1チームに分けてチームのユニフォームとゴール、ボールをそれぞれ制作。
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まずはユニフォームの背中から。
背番号と名前を入れます。今までローマ字で書くものだと思っていたんだれども、漢字でフルネームを入れている子がいた。まだ小学校に上がっていない子だったので、ローマ字が書けないんだろうけど、ちょっと常識を破られた感じ。でもよく漢字が書けるなー。

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ヒビノカップでは毎度おなじみ、ユニフォーム前面の胸のところにはスポンサー名を入れる。
僕のチームは任天堂。任天堂をスポンサーにするチームは毎回いる。やっぱり子供に人気があります。でも今任天堂は花札の会社でも、ゲームボーイの会社でもない、“DS”の会社なんですよね、今の子供にとっては。

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そしてダンボールでゴールを作る。
うちのチームはとても元気がよく、全く意見がまとまらない。でもとりあえず手を動かす子供達で、勝手に作り始めたゴールは、ちょっと切っただけの四角いダンボールを3枚使って繋ぎ合わせた“コ”の字型のゴール。僕が見てきたヒビノカップ史上最もシンプルな構造のゴールになった。(まるでインテリアデザイン史におけるバウハウスの登場のような。)
あまりにシンプルだったので絵を描いた。

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あまり開いてしまうと簡単にゴールしてしまうという意見がチーム内で殺到し、ひもで開かないようにし、絵を描く延長で「入りづらいゴール」という説明を描きまくる。
今回の様に大人と子供で一緒にやるワークショップでは、“子供のアイデア”と“大人のアイデア”が出てくるんだけど、これは大人の意見。

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うちのチームのボール。金のキノコボール。
任天堂ということで、マリオに出てくるキノコがユニフォームのトータルアイデンティティーモチーフになり、ゴールにも描かれた。ボールは子供達の反対を押し切り大人のアイデアでキノコに。
今回は土地柄なのかは定かではないが、球体のボールではない形をしたボールがうちのチームを含めて2チームしかなかった。みんなとにかくサッカーがしたいらしい。千代田区にはサッカーチームが1つしかないらしく、みんなサッカーがしたくてもできないので、今回はとにかくみんなサッカーがしたかったらしい。欲求がストレートにボールに表れた。
ちなみにもう1つのチームは火の玉ボール。(火の玉と言っていたのは制作者だけで、結局タコボールと呼ばれることになった。)制作者はスタッフの藝大生、ヒビノカップの経験者なので、結局その場では異例の球形ではないボールは全て大人のアイデアによるものということになった。それをちょっと残念と思ってしまうこと自体もきっと大人的。そしてアーティストの悪いところな気がする。千代田区には千代田区のスタイルがあるということも受け止めて面白さと捉えていかなければいけないのだろうと思う。

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そして日比野克彦、開会式。

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金のキノコボールでシュート練習。
これがなっかなかまっすぐは飛んでくれない。もちろんそれは狙い。

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試合の様子。審判をしているのは中村政人氏(オレンジのビプス)。
キノコボールは結局得点に絡むことはなかった。けりづらいし、ドリブルしづらい。
両チームの得点は全て相手チームの球形のボールによる。
金のキノコボールは自分も得点できない代わりに、相手もゴールできないので、勝負は後半の相手チームのボールの時。
ヒビノカップのルールは前半と後半でボールを替える。
そしてゴールの位置も変える。
普通サッカーではゴールはグランドの両端にあるものだが、ゴールの位置は自分たちで決めて良い。だからグランドの真ん中にあることも可。
そこがミソなのだ。

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最終的にうちのチームのゴールはこうなった。運ぶのが大変なのでグニャグニャになる。素材がダンボールであることの面白みは、強度が弱く、試合をこなす毎に色々変化してゆくこと。

そして前半後半で、このゴールを立てるか、寝かすかで使い分ける。
当然キノコボールの時はゴールを立てておく。そしてゴールをグランドのコーナーに置き、コの字の空いている辺の側を、グランドの外に向けておく。そうするとどちらにしても入らないボールなので相手チームは無得点になる。
後半、相手チーム制作の球形のボールの時は、ゴールを寝かし、3方向からのアプローチで得点が可能なようにし、グランドの真ん中にゴールを置く。そうするとグランドの真ん中を通過するだけで得点が可能になる。そして相手チームは自分が得点するためにドリブルをするとオウンゴールをしてしまうように作戦を立てたが、それは失敗した。

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岐阜のヒビノカップに比べるとちょっと少ない。
というか俺が日比野さんの近くに写っちゃダメだろ。

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うちのチーム。
チーム名は『キノコレッドダイヤモンズ』
左から、けんと、たつのり、広大、優ちゃん、ひで。
成績は1勝1敗1引き分けでBリーグ3位。無念。
勝ったのは最後の試合。とにかく彼らは純粋で、相手チームの勝つための駆け引きに「ずるい!」とアピールしている間に同点ゴールを決められてしまう様な、ちょっと勝負師には向いていない子供達で、最後の試合どうしても勝たせてあげたくて、ヒビノカップのルール、前半と後半でゴールの位置を変えても良い、というルールに乗っ取り、上記の勝つための作戦を伝授。それが決して卑怯ではないこと、ルール違反ではないこと、勝負に勝つということ、を教えたかった。
これから先彼らが生きていく上で、いつか直面するであろう様々な困難な場面を乗り越えるために、逃げるのではなく、ルール違反でそれを乗り越えるのはなく、暴力を使うのではなく、例えばルールを違う視点で読み解くこと、考え方は1つではないことを、僕のチームになった5人への愛として、それを教えたかった。なんて少し大げさだけど、とにかく勝つためには、相手には得点が不可能に近いゴールを与え、自分たちには3方向からゴールが可能で、相手のオウンゴールも誘える作戦を立てる、それが前半と後半でゴールの位置を変えても良いというルールの中でしか行われていなくて、ただゴールを横にするだけでそれができるという考え方を提示した。

そしてマンスポーツと言われているサッカー。当然当たりの強いこの手のスポーツは体の大きな成人男性が有利。そんな中ヒビノカップは、老若男女、とまでは行かないが大人も子供も女性も男性も一緒にチームを組んで行われる。時には女の子5人対成人男性5人なんてこともあり得る。結果的にはどうしても体も頭も成人が有利で勝ってしまうのだけれども、ヒビノカップ特有のダンボールで作るオリジナルゴール、エアキャップで作られるボール、前半後半でゴールの位置を変えても良いというルール、の中に、成人男性を女の子チームが負かす余地が残されているように思う。
自分たちに有利で、相手に不利なゴールとボールを考え、同じく自分たちに有利で、相手に不利なようにゴールを配置し、グランドを使っていくことを考える。
今回の千代田区はサッカークラブがなくてとにかくサッカーがやりたくて集まった子達が多いとミニサッカー大会という認識を破りづらくなってしまうのかもしれないけれど、あくまでサッカーではない、アートの中にある何か、みたいなふうになっていくとまた少し違う気がする。
ルールとは何か、勝つために自分たちに必要なことは何か、サッカーとは少し違うと捉えることの柔軟性が問われる。


そんで、最後の試合、後半終了30秒前にドラマは起きた。0−0のまま迎えた後半。
チーム内で年長者であるけんととひでは、練習ではボールを触りたがるのに、試合になるとボールに対する執着心がなさ過ぎる。ボールと関係ないところを走り回り、全く積極的なプレーがない。そんな2人に対して、もっとボールに突っ込め!と指示。そしてフリーのひでにボールが渡る。「ひで!そのまま行け!!」相手ゴール付近からひでにドリブルを指示。左サイドからボールを運び、一気にゴール前中央へ!シュート!!
相手チーム制作の球形ボールは、横に倒されたコの字型ゴールを通過!!!!!
そしてその直後、日比野さんによりホイッスルは吹かれた。試合修了!
キノコレッドダイヤモンズ悲願の初勝利!勝ち点3!
思わず5人は駆け寄り抱き合った。

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ここからはゴールを決めたひでの弟、キノコズ最年少たつのり撮影の写真。
子供の創造性がどうとか、自由な発想がどうとか、大嫌いな言葉だけど、今年の春から小学校にあがるたつのりの写真はうまい。下手な藝大生よりよっぽどうまい。
きっと狙ってないからだと思うけど、こうゆう可能性を伸ばしてあげられる様なことが美術とか図工の授業にできなければいけないんだと思う。
今回のようなヒビノカップは、日比野さん曰く、「図工と体育の間」。
絵を描くことだけが美術ではないし、体を動かすことだけが体育ではない。
しかも面白いのは、千代田区が管理している今回の会場になった旧錬成中学校は、文化の発展のために使われることになるらしく、今回使ったすばらしい屋上グラウンドがあるにも関わらず、スポーツ利用は禁止らしい。どんな線引きだよ、と思わず言いたくなる。というさすが行政、頭が固い。そんな千代田区に対して、今回のヒビノカップはとてもいいメッセージになったんじゃないかと思う。まあでも政人さんのところに打ち合わせに来ていた千代田区の役人は、半ば無理矢理屋上の様子を見させられて、それでも子供達が楽しそうな様子を見て、少しは堅さもほぐれたようだから、きっと柔軟な方なんだと思う。でもイベントを見ようとしないというのもさすが行政と言った印象があるね。
おっと愚痴ってしまった。愚痴はこの辺で。
さてたつのり写真館。
こんな風に構成してしまうところが、大人の悪いところ。

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